アーティスト兼イラストレーターのJade Purple Brown氏は、その作品に描かれた大胆さ、自信、喜びにあふれるスタイリッシュなキャラクターと同様に、フレンドリーで自信に満ちています。

 

ブルックリン在住でアドビとの共同作業を頻繁におこなう才能豊かな同氏は、Adobe Illustratorの今年のスプラッシュページのアートワークを制作しました。Brown氏は自身のキャリアにおいてRefinery29からSephora、TikTokに至るまで、たくさんのブランドと仕事をしてきましたが、日々の作品制作に利用しているIllustratorに関する依頼には、特に胸を躍らせています。「このような仕事は目標にもしていませんでしたし、自分にできると考えたこともありませんでした」と彼女は語ります。「ですが、そのメールを受け取ったときは、とにかく驚きました」

 

 

 

アーチ型の窓から晴れた空を見つめる女性を描いた、この最終版アートワークをBrown氏が制作したのは、ちょうどCovid-19のパンデミックが世界各国に蔓延し始めた2020年の春でした。多くの人と同じように彼女も屋内で長い時間を過ごし、内向的になっていましたが、それでも将来の見通しについては断固として楽観的な姿勢を保っていました。

 

ここでは、作品の中にできるだけ喜びを見出すことや作り出すこと、自身のビジネスへの取り組み方、および毎日のモチベーションを保つ方法についてBrown氏にお話を伺います。

デザインとイラストの分野に進んだきっかけは何ですか?

 

私は子供の頃からとても芸術を好み、創造力にあふれていました。いつも様々なものを描いたり作ったりしていました。そして中学校、高校と進学するうちに、ファッションやスタイリングにのめり込むようになりました。私はその分野で仕事をしたいと考え、結局はファッションマーケティングとマネジメントを学ぶことになったんです。両親からは、「もちろんスタイリングの仕事に学位は必要ないけれど、私たちは学位を取ってほしい。だから大学に行きなさい」と言われました。

 

ビジネスの経歴は何にでも役立ちますが、このプログラムの本当にすばらしい点は、PRとマーケティングクラスに接する機会が得られたことです。そのクラスでは、主に自分でプロモーション資料を作成できるようになる目的で、Adobe Photoshopの基本に加え、IllustratorInDesignについてそれぞれ少し教えていました。しかし、それらのプログラムに取り組むようになって思ったのは、「どうしてこんなにうまくできるんだろう?これまでに学んだ何よりも楽しいと感じているのはどうしてだろう?」という疑問でした。そこから私は夢中になって研究し、オンラインチュートリアルを視聴して、プログラムをどう活用すべきかを考え始めました。その研究を通じて、これが自分の仕事になるかもしれないと気付いたんです。

独自のスタイルをお持ちで、イラスト制作でも数々の成功を収めてらっしゃるので、ほぼ独学と聞いて驚きました。

 

子供の頃は、周りにアーティストも、グラフィックデザイナーも、イラストレーターもいなかったので、その世界についてまったく何も知りませんでした。大学に通うまでは、その可能性にも気付いていなかったので、最終学年で学び始めた私は、少し出遅れたと言えますね。卒業後も、引き続き学習と研究にたくさん取り組み、つい最近、自分のポートフォリオをまとめ始めたところです。

ご自身のポートフォリオの構築には、どのように取り掛かりましたか?最初の頃に受けた依頼は何に関するものだったか覚えていますか?


最初のうちは、イラストよりもグラフィックデザインに重点を置いていました。イラストにも重点的に取り組むようになったのは、しばらくしてからです。けれども最近は、自分に刺激を与えてくれる様々なクリエイターに目を向け、その人たちに共通するつながりを探ることにより、ポートフォリオをまとめる取り組みに着手しています。

 

そのようなクリエイターの1人が、ブランディングの仕事を数多く手掛けるLeslie David氏でした。私はよく彼女のポートフォリオを研究し、彼女自身のプロジェクトについての記述や、それらの解説方法、レイアウト方法を学びました。他の人たちのポートフォリオの作品に目を向けることで、「なるほど、私にはブランディングプロジェクトが必要なんだ。プロジェクトを始めるために、とりあえず架空の会社用の偽のロゴを作ってみよう」という発想につながりました。

 

イラストに関しては、試行錯誤の繰り返しでした。最初の目標は、練習のためだけに毎週2つの作品を制作することでした。フィードバックを集めることによって何が人を惹きつけ、何が好まれているのかを把握するため、また単に自分の作品を見て自分の好みを理解するために、それら2つの作品をInstagramで共有しました。それぞれの作品に対して、「この作品の何が好きなのか?この作品のどこが嫌いなのか?」を自問します。そうした内面的なフィードバックを自分自身と交わし、それを次に描くイラストに反映させました。ゆっくりですが確実に自分のスタイルが見つかり、自分が本当に好きなものが何なのかを理解していきました。私にとってInstagramは、アートスクールで受ける厳しい批評のようなものでした(笑)。

 

 

 

作品では、喜び、自信、色彩をすばらしい感覚で表現されていますが、作品制作の際は、どのように制作を開始していますか?また創作プロセスへの刺激になっているものは何ですか?

おっしゃるとおり、私の作品すべてに共通する全体的なテーマは、喜びです。私の作品を見た人には、良い気分になってほしいと思っています。黒人や有色人種のキャラクターは、子供の頃には(アートやデザインの中では)あまり見かけなかったキャラクターですが、私の作品では多く登場します。その理由の一端は、単に私の作品を見る人に、作品の中でその人自身を見てもらいたいからだと思います。そして私の作品を見た人には、人種に関係なく全員に良い気分になってもらいたい。自分の将来や人生における可能性を、楽観的に捉えてもらいたいんです。

 

私のカラーパレットに関して言えば、使っているのは様々な感情を呼び起こす色です。私の場合は喜びや楽しさを想起させたいので、力強い色をたくさん使い、より無彩色に近い茶、黒、白も加えてバランスを取ります。ジューシーでおいしそうな色がとても好きです。

 

 

 

「私の作品を見たときに、良い気分になってほしい。自分の将来や人生における可能性を、楽観的に捉えてもらいたいんです」

作品にはファッションの強い影響が現れており、ファッションマーケティングとマネジメントの学位をお持ちであることが伺えます。フリーのデザイナー兼イラストレーターとして、その学位は起業家的活動を推進するのにも役立っていると感じますか?

 

とても良い質問ですね。というのも、卒業したときには「あれは時間の無駄だったな」と思いましたが、実際には役に立っていますから。今の仕事に応用できることを、学校ではたくさん学びました。週に2回Instagramに投稿するという私の取り組みも、その一例です。これは一種のマーケティングであり、常に自分の作品を見てもらえるよう計画を立てて取り組むことが、とても重要です。

 

自分自身を世の中にさらけ出すことにまだ慣れていないアーティストはたくさんいますし、私も不安を感じたことは確かにありますが、自分の作品を共有することや、自分の最大限の実力を人に知ってもらうことの有効性を認識するだけでも、私にとっては人とのつながりを恐れないよう努力するきっかけになりました。その目的は自分を採用しやすくすることであり、自分自身と自分の作品をどう見せるべきか考えることでもあります。「人に自分の活動をはっきりと理解してもらえているか?自分の世界に引き込むことができているか?プロジェクトの連絡が来たときに、自分の適性を正確に知ってもらえているか?」を自分に問い掛けることが重要で、それらすべてがマーケティングやブランディングにつながります。

 

 

Adobe Illustratorスプラッシュページに採用されたアートワークの制作のきっかけになったものは何ですか?

 

ちょうど自宅隔離期間が始まったときに制作した作品がチームによって選出されました。だれもが「家にこもってタイガーキングを見よう」と思っていた期間ですが、そのときの私は、とても大きないくつかのプロジェクトが迫っていて何が起きるかわからなかったので、少し元気がありませんでした。そのような状況でこの作品を制作し、何かを待ちながらも、不確かさの向こうに希望を見出す気持ちを表現しました。女の子が窓から外をのぞいている場面を描いており、その女の子は髪を風に吹かれながら外を見つめています。

 

自分の作品を(最終版のスプラッシュページとして)初めて見たのは、iPadアプリのIllustratorの画面上でした。アプリがリリースされたばかりだったので、とてもすばらしい体験でした。アプリをダウンロードし、読み込まれるのを見ながら、「これは現実なんだ」と思いました。その後、デスクトップバージョンに作品が表示されたときは、とにかく圧倒されました。私のキャリアにおける最も重要な瞬間として、間違いなく今後何度も振り返ることになるはずです。

次の作品に取り掛かるうえで最も楽しみなことは何ですか?

 

今は製品デザインにとても興味を持っていて、自分のイラストがどのように様々なものに生まれ変わるのかを見るのが楽しみです。最近は、顧客向けの仕事に少し気後れを感じたというだけの理由で、2つのスローブランケットをデザインしました。自分のための作品は長い間作っていませんでしたし、いつも何かの製品を作りたいと思っていました。それで、少し時間を取ってその製品のデザインを考え、最近になってリリースしたんです。とても楽しかったので、他の製品にも挑戦したいと考えています。自分の作品を立体的に見ることや、その作品が単なるアートプリント以外の形で誰かの家にあるかもしれないと思えることが好きなんです。

 

 

 

独自のスタイルの見つけ方について、他のフリーランサーやフリーのイラストレーターに伝えたいアドバイスは何かありますか?

 

自分のための時間を確保し、自分が何者で、世の中にどのような貢献ができるのかを考えること。子供の頃に得られなかったと思うことや、もっと見たいと思うものについて考え、それが何か他にはない、明確に自分を表すものへと形を変えるまで、とにかく活動を続けます。

 

そして、できる限り多くのことを実践することです。自分という人間を形成しているものに焦点を絞り、それを作品に組み込めるよう努力します。他の人たちの活動など、気になるものがたくさんあるので、自分に集中するのは難しいかもしれません。ですが、自分のための時間を確保して、自分が本当に好きなものや本当に楽しめるものが何なのかを理解するとともに、自分が取り組みを続けていること、自分が良い方向に向かって進んでいることを思い出す余裕を持つのが、とても重要だと思います。様々なのものを制作し、一番自分らしいと感じられるものを見つけることが必要になります。それが見つかれば、もう大丈夫です。

Jade Purple Brownの詳細はこちら

作品が今年のCreative Cloudのスプラッシュページのアイデンティティに採用された他のアーティストの紹介はこちら

 

 

来年度の作品募集への参加をご希望の方は、ご自身のポートフォリオを提出してください。他薦も受け付けます。

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